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【ドイツ便り】ヨーロッパが音楽で一致団結!年々盛り上がるユーロビジョン・ソング・コンテスト

Jul.21.2017

皆さんはユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest、略してESC)という歌番組をご存じですか? 1956年から続く歴史あるヨーロッパの音楽コンテストであり、国の代表歌手が歌で競い合うという内容。今年も5月にウクライナの首都キエフで行われ、ヨーロッパだけでなく、米国やオーストラリアでも生中継されたほどの人気を見せました。

ESCの概要をまとめると・・・

・欧州放送連合(European Broadcasting Union、略してEBU)が主催

・基本的にEBU加盟国(56カ国)が出場権を持つが、例外にイスラエルやオーストラリアも参加している。準決勝には46カ国、決勝には26カ国が進む。

・決勝戦は昨年、優勝した国で行われる。時期は毎年5月にあたる。

・審査員と視聴者投票で順位を決定。なお、自分の滞在国に票を入れることはできない。

・ドイツの視聴率は平均36,8%(2016年度決勝戦)と紅白歌合戦並みの国民的テレビ番組と言える。

ESCのおもしろい点は英語で歌う歌手が多い中、現地語の歌も披露されるところ。今までに聞いたことがないような歌に出会えます。例えば今年優勝したポルトガルのサルバドル・ソブラルさんも母国語で歌いました。一応、各歌の前には出場歌手の紹介ビデオが流れるため、愛について歌うことは事前に分かっていました。ただ歌詞の字幕や翻訳は出ないので、詳細は理解できませんでした。それでも繊細で感情がこもった声が皆の心を打ち、多くの票を得ることができたのだと思います。



更に音楽のジャンルは国によっても異なるので、ベラルーシが発表したフォークロア・ポップやクロアチアのオペラとポップと混ぜた楽曲もなかなか新鮮でした。ESCはまさにその国の音楽性や流行が表現される場と言えるでしょう!





歌番組に潜む政治問題

多くの政治・社会問題を抱えるヨーロッパがESCでは平和に音楽で一致団結する裏腹、出場国同士の揉め事も起きてしまうことがあります。

今年のESCがキエフで行われたのは去年、ウクライナ代表のジャマーラさんが優勝したためです。彼女は自分のルーツを歌に表し、絶大な歌唱力と共に観客を圧倒させました。音楽にあまり詳しくない私も当時テレビで見て、きっと彼女が優勝候補に入ると勘づいたぐらいです。ジャマーラさんは今でもロシアと領土問題を抱えているクリミア半島出身です。彼女の家族はタタール人で、祖祖母は1944年のスターリン政権時代にクリミアから中央アジアに強制移住させられました。そのため、ジャマーラさんは1983年にキルギスで生まれ、一家が故郷に戻ることができたのはその後になります。



歌詞で「ロシア」という言葉が出ることはありませんが、対ロシアの内容が優勝にまで上り詰めてしまうことはロシアにとってはおもしろくない結果だったことでしょう。

ジャマーラさんの件とは直接関係ないのですが、今年のESC決勝戦がウクライナの首都キエフで行われることになり、ウクライナとロシア間であるトラブルが起きました。それはロシア代表として出場するはずだったユリア・サモイロヴァさんがウクライナの入国許可を得られず、ロシアが怒って出場を拒否、それだけではなくロシア内での番組放送も取りやめたことです。サモイロヴァさんのビザが下りなかった理由は現在、クリミア編入問題を抱える中、2015年にロシアを通じてクリミア半島でコンサートを行ったため。その時の入国がウクライナ側からすると違法なので、サモイロヴァさんには3年間のウクライナ入国禁止令が下りました。この件に関してはロシアだけでなくESCもウクライナに例外の許可を認めるよう説得を試みましたが、ウクライナの意志は固く、結果ロシアが出場できないことになってしまったのです。

歌番組に政治問題を絡めることは一体どこまで正しいのか悩みどころですね。

 

プロフィール
町田文
1986年生まれ、東京都出身。ドイツ・ミュンヘン在住。マーケティングの仕事をする傍ら、ドイツのライフスタイルや観光に関するライティング、翻訳を行っている。自身のウェブサイト「ドイツでハンドメイドライフ」ではドイツ語の口語表現や現地情報を発信。

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