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【パリ便り】シリアの豊かな食文化を新発見!意欲溢れる難民に与えられるチャンス

Aug.18.2017

ここ数年、フランスでは難民に関するニュースが絶えません。マクロン大統領が当選した今年の選挙戦でも大きな争点となっていました。相次ぐ無差別テロの影響で(過激派の一分子に過ぎませんが)、パリ市民のシリア難民やイスラム教徒に対する誤解や不信感を拡大させるのではないか、と誰でもなく難民たち自身が懸念しているはず。

しかし幸いなことに、良い変化も徐々に見え始めています。過去の【ドイツ便り】では難民統合プロジェクトについてご紹介しましたが、ここパリでは“食”を通じての異文化交流が盛ん!

まず動いたのは、家庭料理を通じて異文化交流を支援するフランスの組織グループFood Sweet Food(フード・スイート・フード)です。昨年初めて、パリで約一週間Refugees Food Festival(リフュジーズ・フード・フェスティバル)というフードイベントが開催されました。これはプロのシェフが自分の店ではないレストランのヘッドシェフを務め、一味違う料理を提供するというもの。このフードイベントで中心となり、フランス各地のレストランで腕を振るっているのがシリア難民のモハメッド・エル・ハルディさん。

Patrick Kovartik (右:モハメッド・エル・ハルディ 左:L’Ami Jeanオーナーシェフ ©Patrick Kovartik)

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シリアの首都ダマスカス出身のモハメッドさんは、妻と3人の子供たちとともに地中海を渡り、2015年の年末にフランスに入国。ドイツを目指す難民が多い中、フランスを選んだ理由は「世界屈指の食の都だから」と語っています。彼はシリアで約20年間、二つのレストランの経営者およびシェフとして働き、まだまだ学びたい、働きたいという意欲があると言います。昨年に続き今年も、人気フランス料理店L’Ami Jean(ラミ・ジャン)のレストランで、オーナーシェフとともにシリアとフレンチのフュージョン料理を提供し、大盛況となりました。

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©Caspar Miskin

さらに、今年7月にはシリア難民だった女性が、パティスリーmaison aleph (メゾン・アレフ)をオープン。シリアを中心に広がる歴史的シリア地区であるレアントというエリアの名称をから、レバント菓子を提供しています。

これまでは、溢れんばかりのハチミツを使った強烈な甘さと花の香りを効かせたアラブ菓子と混合されることが多かったようです。シリア出身でオーナーのミリアム・サベさんは「故郷のお菓子はこの味とは違う」とパリに移ってからずっと思っていたそう。金融トレーダーとして働いていましたが、3年半程前に仕事を辞めてレバノンへと行き、パティスリーの修行をしました。その後パリの職業学校で資格を取り、店舗をオープンさせることができたそう。

©Caspar Miskin
©Caspar Miskin

お店には、マカロンのような小さいサイズの焼き菓子がたくさん並んでいます。糖分の甘さは冷え目ですが、ナッツ、ピスタチオ、フランス産バター、オレンジフラワーなど素材の風味を活かして濃厚な味わい。上質で品があり、ついつい手が伸びてしまいます……。

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©Caspar Miskin

育ってきた背景も母国語も宗教も肌の色が違っても、料理を介して通じ合えるものがあるということを示してくれています。“難民”という言葉で一括りにしても、そこにいるのは人間で十人十色の人生がある。家族があり、夢や目標に向かい、平和な異国で新たな人生を歩みたいと意欲的な人も多いのです。とはいえまだまだ働き自立するチャンスを与えられる機会は少ないため、シリアや難民を違った視点から見始めているパリが先陣を切って、良い変化をもたらしてくれることを期待したいものです。

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【ドイツ便り】社会人でも夏休みがほしい!ドイツ式バカンスとは?

Aug.11.2017

夏休みの時期になりました。まるで学生のように聞こえますが、ドイツでは社会人でも5月から9月にかけて長期休暇を取る人が大勢います。ドイツでいう長期休暇とは通常2-3週間を指します。中には残業時間を合わせてもっと休む人もいるほどです。

 
ドイツの有給休暇の仕組み

前述したように月の半分以上も会社を去るのが普通ということは、まず会社が長期の有給休暇を認めていることになります。現にドイツ企業に勤めていると年始に今年の有給休暇のスケジュールを提出するケースが多いです。看護師などシフト制の職業となると前年末に予定を組む場合もあり。私の勤め先ではおおよその予定を2月までに出すことが求められます。幸い多少の調整は融通が利くので、後から日にち変更もできます。

ドイツの最低有給休暇日数は週5日勤務の場合、20日間(=土日を含み4週間)です。それでも58%の会社員は30日間の有給をもらっています。平均は27日間です。(2016年、COP CompensationPartner GmbH調べ)日本と異なる点は日数が多いだけでなく、完全に消化することも当たり前なところです。忙しくてその年にどうしても消化しきれないなら、翌年に持ち越すのが常識。「こんなに休んでしまったら周りに迷惑をかけてしまうのでは」なんていう後ろめたい気持ちはドイツ人にはありません。休暇のスケジュールを早めに確定することで、誰かが休んでいても仕事が回るように調整されているのです。

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ここが好き!ドイツ人のバカンス先

日本人がハワイやグアムによく行くように、ドイツ人にも好みのバカンススポットがあります。ダントツな人気を誇るのはスペインのマヨルカ島!同じくスペインのカナリヤ諸島とクラブの多さで知られるイビサ島も名立たる旅行先です。スペイン以外にはギリシャの孤島(クレタ島やロードス島)、または地中海に面しているトルコのアンタルヤなど、暖かくて海があるリゾート地が人気です。

ドイツに住んでいておもしろいのは旅先だけでなく同じホテルにまで何度も訪問している人がいることです。私の知り合いでトルコの同じホテルに20回も泊まった人がいるのですが、飽きないことに感心しています(笑)

 
若い世代に広がる手探り旅行

「手探り旅行」とは私が勝手に作った造語ですが、旅行代理店を使わずに自分ですべてを手配して行う自己流の旅行のことです。ここでは私自身や友人の体験談を綴ります。

私は去年から主に7月を利用して夫と手探り旅行をし始めました。去年は南フランス、コート・ダジュールにある小さな村に、今年はまだドイツ人にはあまり知られていない南イタリアのプーリア地方の古い町に滞在しました。それぞれAirBnBの一軒家とレンタカーを借り、浜辺や1-2時間のドライブで行ける観光名所を巡る旅をしました。また、南フランスの宿泊先ではキッチンがあったので地元の市場やスーパーに通って自炊まで体験。フランスのお惣菜を色々試しました。

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(フランスの宿泊先は大家さんの祖父母が営んでいた元農家。)

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(イタリアの宿泊先。AirBnB用に本家の横に小さな一軒屋を建てた大家さん。)

 

旅行の計画をする際、まずは夫と大体の行先(国と地域。あとドイツ人観光客が少ない場所。笑)を決め、それからAirBnBでプール付きの物件を探す手順を取りました。プール付きと聞くと、豪華な別荘を借りるように聞こえますが、大家さんが祖父母から受け継いだ元農家だったり、大きいお庭付きの古家です。こういう場所がヨーロッパの田舎にまだまだ残っているが嬉しい!観光地の中心にいないと不安を感じる人もいるかもしれませんが、私たちはいつも大家さんにおすすめスポットや現地でおいしいレストランなどを聞き、前日の夜に明日の予定を大雑把に組み、なるべくフットワークを軽くするようにしていました。

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(イタリアの宿泊先の敷地内にあったプール。大家さん一家と一緒に利用しました。)

このような手探り旅行は他の人も行っています。例えば、飛行機が苦手な友人カップルは数年前にキャンピングカーを買い、ドイツ・オーストリア・イタリア(それもシチリア島まで)を縦断するという旅をしました。レストランの駐車場や農家の一角などで一泊しながら(ちゃんと許可は取っていますよ!)徐々に南下して行き、これはこれで毎晩どんな場所で寝るか分からないからおもしろいと思いました。このような長距離旅をのんびりできるのも長期休暇が取れるおかげです。

私としては日本社会にももっと有給休暇の完全消化が広まり、一週間以上の休暇が認められるようになってほしいです。長期休暇を終えて仕事復帰する同僚の顔はやはりリフレッシュしていますので、心と体の充電は誰にでも必要なのだと思います。

 

プロフィール
町田文
1986年生まれ、東京都出身。ドイツ・ミュンヘン在住。マーケティングの仕事をする傍ら、ドイツのライフスタイルや観光に関するライティング、翻訳を行っている。自身のウェブサイト「ドイツでハンドメイドライフ」ではドイツ語の口語表現や現地情報を発信。

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