【パリ便り】勤務時間外は完全オフラインに!業務メールを無視していいフランスの新法
2017年1月1日、フランスで新しい法律が施行されました。
「オフラインになる権利」と呼ばれる新法は、フランスの労働者は勤務時間外に業務メールを見なくてもいいという内容。従業員50人超の企業には、従業員が業務メールを送受信してはならない時間帯を明記する行動規範の策定が義務付けられます。
これにより、退勤後やバケーション中などは一切業務メールを無視しても咎められず、本当の意味で仕事から解放されるわけです。「勤務時間外にも業務メールを確認して返信するべきというルールは強迫観念のようにつきまとい、残業代を受け取っていないうえに、ストレスや燃え尽き症候群、睡眠障害、家族関係の問題を起こしかねない」と主張する人が多かったのだとか。
確かに、バケーション中旅先で羽を伸ばしてリラックスしている時に業務メールを受け取ると、一気に現実に引き戻されます。それが深刻な内容ならなおさら……。
周りのフランス人を見ていると、彼等はオンとオフの差がものすごく激しい性分だと日頃から感じます。
日本人であればプライベートの時間に同僚と飲みに行って仕事の話をするというのは度々ありますよね。フランス人にそれを言うと「オフタイムに仕事の話なんて!」ととても信じられないというリアクションでした。
仕事の話をするとしたら接待に限りますが、これもフランス的ルールが存在します。
接待のためにディナーに誘うのはご法度で、ランチの2時間程度と決まっているのです。ディナーに誘うということはプライベートで付き合いたいという意思表示であり、たとえご馳走したり手厚い接待を行っても、ビジネス上でのお返しが来ることは期待できず、日本人のように“借りを作る”という考え方は通用しないのです。
サルコジ元大統領の不倫、再婚などのスキャンダルが報道された時もフランス人は口を揃えて「大統領がオフタイムに何をしてようが、プライベートは関係ない」と言っていたそう。
日本とのオン・オフの考え方の違いが顕著に表れている例ではないでしょうか。
また、フランス語には友人や恋人を意味する単語にもami(アミ)やcopain(コパン)と関係性によって分けられています。心から信頼できる関係はami、遊び仲間の一人という軽い関係ならcopain。さらにこれら単語にpetite(プティ)がつくとさらに細かく分けられるなど、関係性や物事を白黒はっきりさせるメンタリティが根付いているようです。
完全にオフラインになることが許される新法は、労働者にとっては喜ばしい内容ですが、バケーション中の本人にしか処理できない業務や顧客とのやり取りなどが発生した場合どうなるのでしょうか……。利用者側に立った時、「担当者はバケーション中で連絡が取れません」と言われて納得できるのか疑問です。
新しい法律が施行されたり取り止めになったり、案外法律をコロコロ変えるフランス政府なので、今後この法律が社会全体にどのような影響を与えるのか、見守りたいと思います。