【パリ便り】ファッション業界“サステナブル”の先駆者、スニーカーブランド『Veja』
昨今、フランスのファッション業界のキーワードとして“サステナブル”や“エシカル”を耳にする機会が増えました。
ラグジュアリーブランドの中でも、動物愛護を主軸に成長を続けてきたステラ・マッカートニーは海洋ゴミから生地を生成する新たな取り組みを始め、イギリスを代表するブランドであるヴィヴィアン・ウエストウッドも“必要なものだけを買い、長持ちさせること”を長年提議しています。
ラグジュアリーからカジュアルブランドまで、環境へ配慮した製造へと乗り出すブランドがますます増えている印象ですが、ファッションと環境問題を結びつけた先駆者は、フランスのブランドだと言われています。それがスニーカーブランドの『Veja(ベジャ)』です。
Vejaは2005年に二人のフランス人男性、フランソワとセバスチャンによって立ち上げられました。長年の親友であった二人はともに大学で環境開発を学び、ニューヨークの銀行でインターンを経験します。しかし、「マーケティングでは世の中は良くならない」と考えた二人は1年間世界中を旅することに。
ブラジルで出会った家族経営のオーガニックコットンやゴム農家の人々に感銘を受けたと言います。「アマゾン奥地でパームツリーを栽培する彼らと、中間業者を介さず直接取引をすることで、価格は一般のものより安く、現地スタッフにはより高い報酬を支払うことができる。ゴム農家に関しては、通常は採集後に加工業者に依頼するが、農家が採集から加工まで請け負うことで高い報酬と人材を生み出すことに繋がる。天然ゴム農家の方が高い報酬を得られれば、現地の人々は家畜の飼育や木材利用のための森林伐採など、森林破壊に繋がる仕事を選ばなくなる」。とセバスチャンは教えてくれました。
現在、約320を超える家族経営の事業者から毎年3万ポンド(約13.5トン)を超えるフェアトレードのコットンを輸入しています。
ブラジルで一般的に食されているティラピアの皮を原料にした革や、100%再利用のペットボトルからポリエステルを抽出するなど、年1〜2回新たに発表されるモデルも全てエコフレンドリー。
広告宣伝費は不要と考え、立ち上げから12年間一切広告はうっていません。口コミで広がり、現在フランスをはじめとするヨーロッパの百貨店やせレクトショップ、日本では新宿伊勢丹百貨店などで取り扱われいます。「“サステナブル”だから購入するのではなく、デザインがいいから欲しいと思ってもらえる商品作りをモットーにしている」と語るように、コンセプトを全面に押し出していないのも人気に火がついた理由の一つかもしれません。
7年前には、パリ10区にコンセプトストア『Centre Commercial(サントル・コメルシアル)』をオープンさせ、Vejaのコンセプトと同じく、環境への配慮を第一に掲げたブランドを集めています。
「Vejaを立ち上げた12年前に比べると、マーケットは変わっている。消費者は安価で質の悪い商品にお金を費やすことには飽き、背景を含めて良質なものを求めるようになってきた。美しい花を咲かせるよりも、強くて太い根を張らせることこそがVejaの使命。僕らの旅はまだまだ始まったばかり」。
VejaとCentre Commercial、そして各業界へ、“サステナブル”の根がどのように広がっていくのか注目です。