VRの可能性について〜Björk Digitalを体験して思うこと
ビョークの来日とDJパフォーマンスも話題になったBjörk Digitalが日本未来科学館で開催中。今年に入ってから特にVR市場の活発な動きは気になっていたので体験しに行ってきました。
Björk Digitalでは3つのVRコンテンツが用意されており、その3つを鑑賞するとVRの様々な可能性を考える切っ掛けになっている、というところが個人的にさすがビョーク、と関心しきりのポイントでした。
360°映像体験というと、なんとなく壮大な風景とかモデルルームのような、広い空間を見渡せる機能に長けているのかと思いきや、至近距離の表現こそ新しい映像体験があったというのが大きな学び。ハグできる距離にあたかもビョークがいるような、そんな体験。
それからVR内でどのように時間を過ごすかは自分で選択できるので、いくつかの選択肢を考慮して設計するという点がコンテンツ制作側として今までになかった要素だと思います。私はビョークの歌を聞きながら、ビョークに背を向けて何もない静かな空間をぼんやり見つめたくなったりもしました。
あの重苦しいヘッドギアと鑑賞中のシュールな姿からは想像もつかなかったけれど、意外にも非常に癒やし効果が高いというのが驚き。もちろん鑑賞するコンテンツによるのですが、VRで癒やしを得ることができるのは大きな発見。ビョークの3作品を観終わった後はスッキリしてストレスが軽減された気分に。医療や福祉への活用が期待されているのも頷けました。
VRの今後をいくつか予想してみます。
❏VR体験シアターができる
VRイベントは、会場や誘導などVR装着時以外がどうしても微妙な雰囲気になりがちなので、おしゃれにVRを楽しめるようなVR体験専用のシアターが求められそう。1人ずつ革張りのブースで仕切るとか。一家に一台などVRが広く普及するまではこういった場所が欲しいところ。
❏映像カメラマンの仕事が減る!?
VRの中だとカメラワークの良し悪しが作品の良し悪しに直結しない印象。360°見渡せちゃうからカメラワークもクソもないと言いますか。。なのでVRの普及によってカメラマンの仕事が増えることはないかもしれませんが、企画演出のニーズは増えるはずなので、企画ができてカメラも使えるという人材は重要になって来る気がします。
(追記:VFXなどポストプロダクションのニーズはますます増加ですね)
❏VR×AIで死んだ人がよみがるなんてことも可能..?
発展途上の現在のVR端末でさえ、その風景の中に実際に自分が立っているような感覚や、すぐ側に本当に人がいるような感覚を強く与えられます。この視覚効果に人工知能を組み合わせたら、恐ろしいほどあらゆることができてしまいそう。例えば生前に自分の映像を撮影しておき、自分の会話の癖などをAIにプログラムしておいたら、死んだ後も仮想現実の中で自分が誰かと会話することもできるでしょう。残された家族が寂しくないように、仮想現実の自分を作るサービスなんていうのも始まりそう。倫理的に是非が問われるものも数多く登場するのでは?と思いました。
❏女性にやさしいヘッドギアの開発を
これは予想というより希望ですが、ヘッドギアの装着感は、フルフェイスのヘルメットを被った時くらいのグチャグチャ感。おでこから後頭部にかけてベルトがあるので、キレイに結わえた髪やトップにボリュームを出したヘアセットは台無し。眉毛は消えるし頬回りのファンデやチークは取れます。そのくらい気にしない女性もいるでしょうが、女性向けサービスのプロモーションでは採用しにくいよね。
こんな感じですが、VR気になる〜という方、Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験はおすすめなので、ぜひ。
まとめると、個人的にはエンタメよりも癒やしという点に注目し、VRの活用を考えて行きたいと思いました。
補足:私は酔いやすいので酔い止めを飲んで観賞しました。酔わないVRの研究開発は大きな課題だとは思います。
Mutsumi Lee