【パリ便り】シリアの豊かな食文化を新発見!意欲溢れる難民に与えられるチャンス
ここ数年、フランスでは難民に関するニュースが絶えません。マクロン大統領が当選した今年の選挙戦でも大きな争点となっていました。相次ぐ無差別テロの影響で(過激派の一分子に過ぎませんが)、パリ市民のシリア難民やイスラム教徒に対する誤解や不信感を拡大させるのではないか、と誰でもなく難民たち自身が懸念しているはず。
しかし幸いなことに、良い変化も徐々に見え始めています。過去の【ドイツ便り】では難民統合プロジェクトについてご紹介しましたが、ここパリでは“食”を通じての異文化交流が盛ん!
まず動いたのは、家庭料理を通じて異文化交流を支援するフランスの組織グループFood Sweet Food(フード・スイート・フード)です。昨年初めて、パリで約一週間Refugees Food Festival(リフュジーズ・フード・フェスティバル)というフードイベントが開催されました。これはプロのシェフが自分の店ではないレストランのヘッドシェフを務め、一味違う料理を提供するというもの。このフードイベントで中心となり、フランス各地のレストランで腕を振るっているのがシリア難民のモハメッド・エル・ハルディさん。
(右:モハメッド・エル・ハルディ 左:L’Ami Jeanオーナーシェフ ©Patrick Kovartik)
シリアの首都ダマスカス出身のモハメッドさんは、妻と3人の子供たちとともに地中海を渡り、2015年の年末にフランスに入国。ドイツを目指す難民が多い中、フランスを選んだ理由は「世界屈指の食の都だから」と語っています。彼はシリアで約20年間、二つのレストランの経営者およびシェフとして働き、まだまだ学びたい、働きたいという意欲があると言います。昨年に続き今年も、人気フランス料理店L’Ami Jean(ラミ・ジャン)のレストランで、オーナーシェフとともにシリアとフレンチのフュージョン料理を提供し、大盛況となりました。
©Caspar Miskin
さらに、今年7月にはシリア難民だった女性が、パティスリーmaison aleph (メゾン・アレフ)をオープン。シリアを中心に広がる歴史的シリア地区であるレアントというエリアの名称をから、レバント菓子を提供しています。
これまでは、溢れんばかりのハチミツを使った強烈な甘さと花の香りを効かせたアラブ菓子と混合されることが多かったようです。シリア出身でオーナーのミリアム・サベさんは「故郷のお菓子はこの味とは違う」とパリに移ってからずっと思っていたそう。金融トレーダーとして働いていましたが、3年半程前に仕事を辞めてレバノンへと行き、パティスリーの修行をしました。その後パリの職業学校で資格を取り、店舗をオープンさせることができたそう。
©Caspar Miskin
お店には、マカロンのような小さいサイズの焼き菓子がたくさん並んでいます。糖分の甘さは冷え目ですが、ナッツ、ピスタチオ、フランス産バター、オレンジフラワーなど素材の風味を活かして濃厚な味わい。上質で品があり、ついつい手が伸びてしまいます……。
©Caspar Miskin
育ってきた背景も母国語も宗教も肌の色が違っても、料理を介して通じ合えるものがあるということを示してくれています。“難民”という言葉で一括りにしても、そこにいるのは人間で十人十色の人生がある。家族があり、夢や目標に向かい、平和な異国で新たな人生を歩みたいと意欲的な人も多いのです。とはいえまだまだ働き自立するチャンスを与えられる機会は少ないため、シリアや難民を違った視点から見始めているパリが先陣を切って、良い変化をもたらしてくれることを期待したいものです。









まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物、いわゆる“食品ロス”はフランスでも関心の高い社会問題。フランスでは年間約700万トン(2015年度)という膨大な食品が廃棄されています。これを金額に換算すると、年間で1兆6000億〜2兆6700億円が無駄にされているとL’express誌は報じていました。
法律制定後、不要になった食品の配送を行う流通業者や、福祉施設などへ提供するフードバンク団体が新たに誕生しました。なかでも注目を集めているのは、パリ北部の幹線道路高架下でフルコースディナーを提供する非営利団体『Freegan Pony』です。
パリ近郊の生鮮食品市場から売れ残った野菜や果物を引き取り、ベジタリアン料理に変えてしまう異色のレストラン。路上に捨てられている廃棄物から衣食住をまかなう反社会主義(Freegan)の思想に基づき、その名が付けられたそう。
日本の食品ロスは年間約632万トン(2015年度)。大手食品メーカーが賞味期限を伸ばすために製造方法の見直し・改良を行ったり、食べ残しが作法である中華料理のお店が多い横浜も、食べ残しを持ち帰るドギーバッグを推奨するなど「食べきり協力店」事業に取り組んでいるといいます。店側も捨てる量を減らせるとともに、片付けにかかる時間や手間といった人的コストが省けるというメリットも。
ファッションの都なのに、フランス人にとって身なりにお金をかけるのはこの上なく「ダサい」ことだそう。
(今年でビキニ誕生70周年!のポスター)











